国土交通省は2013年度にも、耐震性のある建物を認定する制度を新設する。公共建築やマンションなど全ての種類の建物が対象で、現在の耐震基準を満たしていれば適合マークをつけられる。耐震診断を受ける所有者には補助金を出し、より多くの建物の耐震性の有無を明確にする。適合しない建物には建て替えや改修を促し、地震に強い街づくりをめざす。
現在の耐震基準(1981年制定)を満たしている建物を認定する。旧基準の時代に建てられていても、耐震診断を受けて今の基準を満たしていればよい。現状では基準を満たしていなくても、耐震改修すれば認める。これまでは国の認定制度がなかったため、所有者が耐震基準に合っているかどうかの診断を受ける動きが広がらなかった。
今国会に提出する「耐震改修促進法改正案」に制度の新設を盛りこむ。建物の所有者から都道府県などへの申請を受け、専門知識を持つ建築士が耐震性の有無を調べて認定する。所有者が認定を申し込むための費用は数千~数万円程度の見込み。虚偽表示をした場合には、30万円程度の罰金を科す方針だ。
同省の推計によると、08年時点で耐震基準を満たしていない建築物は住宅で約1050万戸、学校、デパートなどの大規模建築物で約8万棟あり、それぞれ全体の約2割を占める。東日本大震災の際には、建物が道路側に倒れて、住民の避難や緊急物資の輸送の妨げになり、被害が拡大した。
耐震診断を受ける所有者を増やすために支援制度を充実させる。大規模な建物の所有者向けには来年度にも、費用の最大100%を国と自治体で補助する制度をつくる。デパートなどの場合、診断に数百万円かかることもあるためだ。一般住宅を耐震診断する場合も、大半を国と地方で支援する。
診断の結果、耐震性が足りない建物には建て替えや改修を促す。大規模な建物には現在、国が耐震改修の費用の最大3分の1を補助しているが、来年度から同5分の2に増やす。
一方で、耐震認定を得られれば、マンションの賃貸やオフィスビルのテナント募集、中古住宅の転売などに有利になる可能性がある。住宅の購入に際しての目安にもなるため、この10年余りで約1.5倍に市場が拡大している中古住宅の売買を後押しできるとみている。
国交省は15年中にも、デパートなど大規模な建築物の耐震診断を所有者に義務づける方針だ。ただ対象は全国で数千棟にすぎない。認定制度の導入でマンションや戸建て住宅などを含め、幅広い建物の耐震性を向上させることを狙う。
このほか、避難路や緊急輸送道路沿いにある住宅は、自治体が耐震改修を要請できるようにする方針。倒壊の危険性のある住宅の所有者が改修しない場合には公表できるようにする。
これまでは努力義務にとどめていたが、大地震で壊れた住宅で避難路や緊急輸送道路がふさがれれば、犠牲者は一段と増加する。首都直下地震などの発生が近い将来予測されていることもあり、同省は一般住宅の規制も強化する必要があるとみている。
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