2013年9月18日水曜日

竜巻に対して建築屋はどう対策をするか?

2013年9月2日14:00頃 埼玉県越谷市にてF2クラスの竜巻が発生しました。

私はその時間テレビを見れる環境ではなかったが夕方のテレビに映し出された状況にはあ然とさせられた。

衝撃的だったのは何だかわからない大きな茶色い壁が住宅にもたれかかっている景色だ。ヘリコプターからの映像も見たが何が起こったか理解に苦しむ景色でした。




翌日も現地に向かうことは出来ず、私の所属する木造住宅の耐震研究会の佐久間先生から調査の速報写真が送られてきた。

でも写真だけでは現地の空気や臭いが伝わってこない、佐久間先生の調査資料を基に現地に入れたのが発生から4日目の9月5日だった。

まずはあの理解の出来ない茶色の壁を見に向かった、しかしその途中至るところで屋根にブルーシートが貼られ、あちこちで復旧作業が行われていた。



土曜日であった事もあり、ボランティアの人々が沢山作業をされていた。


本日9月18日夜に同研究会で調査に行った仲間の報告会が行われた。

調査は発生の翌日より行われた。竜巻により倒壊した建物を中心に何故壊れたのか、どの様に壊れていったのかをじっくりと調査されている。

地震の場合と違い竜巻による災害の場合、その復旧スピードが速いので、どんどんと跡片付けが行われるので、1時間でも早い時間に調査に入らないと1時間後には景色が変わってしまうということであった。

また、昨年筑波で起きたF3クラスの竜巻被害の調査報告と記憶に残るベタ基礎コンクリートの築浅の住宅が転倒し1名亡くなったという建物を風洞実験により、風速どのくらいで当該建物が転倒するのかの実験の様子なども紹介された。

調査から判ったこと(F2クラスの越谷の場合)

○窓が割れ屋根に風が抜ける

○窓が割れ別の窓から風が抜けていった

○構造上金物がない(ひねり金物・カスガイ)ので屋根が飛んだ

○1階部分の耐力不足により倒壊した

○風下(竜巻後半)ではかなりの飛来物が建物にあたり破損している。

○屋上・庭などに置いてある鋼板製物置などは巻き上げられ、2時災害となる所有者責任を問われる?


その他、写真等により読み取れる原因はもっともっと沢山あるようだが、今回もしこの様な対策がとられていたら、被害は最小限で済んだのかなとい思うことは。


○竜巻対策としてはガラスが割れないように、雨戸・シャッターを閉める・・・・・・・これって台風が来るってわかっていれば出来るが、竜巻の時はほぼ無理に近いと思われる、なので防犯ガラスがお薦め。かなりの飛来物に対しても割れはするが破損はしにくい。

○屋根の小屋束・母屋・垂木の金物による緊結が必要

○風が抜けないようなポーチや、インナーガレージは風の抜け場所が無くなり破壊される。

○地震に対する耐震補強同様に所定の風圧に対しても耐えられるような壁量と柱頭柱脚の緊結は必要。

○プレハブ・物置なども吹き上げられないように基礎をしっかりとしてアンカーボルトなどにより緊結する事。

○瓦の場合、耐風仕様としメンテナンス上の問題はあるかもしれませんが、全数釘止めが必要と思われます。

○特に今回、大きな被害となった50坪のプレファブの建物が土台を残して飛来してしまい、周辺の住宅を大破させた件については、竜巻のせいだけでは収まらない問題である。

50坪(5間x10間)のプレハブ上屋が飛ばされて民家に激突
茶色く見える壁はプレハブの床パネル。

残された土台と大引き

9月5日の様子

Googleストリートビューによる竜巻発生前のプレハブ建物

茶色い壁が撤去された跡、改装工事中だった建物はかなりのダメージを受けていた。


まず調査により軽量鉄骨柱が木製の土台にコーチボルトを使用して止め付けられているが、鉄骨柱を伝った雨水がコーチボルトを伝い土台を腐らせてしまい、このコーチボルトは引き抜きに対してほとんど効力を発揮していなかった物と思われます(調査写真より推測)。


この様な仕様の建物が全国に沢山存在していること、もしもオーナーでしたら点検が必要です。 建築士としてはプレハブの構造計算はプレハブ屋さんにお願いしていますが、確認申請を出すのは私達建築士です。


構造計算に於いては地域の風圧係数は決まっているのでそれを越える風速は想定外でしょうがないと言うことでよいのでしょうか?、今回のプレハブが新設の状態で浮き上がる風速は59m/sである(東京工芸大学空力データベースによる)と推定されています。

プレファブ特有の劣化の仕方を今回目の当たりにして、ちょっと腰が引けてしまいます。


Googleストリートビューによる竜巻前後の写真を何枚か掲載します。建物の屋根構造・築年数等が推測できます。












0 件のコメント: